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木材の寿命、住まいの寿命

2023年05月29日

桧は伐採されてから200年くらいまでは強度を増し、その後1000年をかけてゆっくりと弱くなり、伐採した時とほぼ同じ強度になると言われています。築1300年を超える法隆寺。昭和の大改修の際には約65%の材料を再利用できたそうです。瓦をおろし、重みから解放された垂木は、もとの真っ直ぐな状態に戻り、カンナをかければ良い香りを放っていたそうです。築30~40年で建て替えをすることの勿体なさ、木に対する申し訳なさを感じます。
とはいえ、建て替えの理由は、建物の強度よりも住み心地の悪さが大半だと思います。暑さ、寒さ、設備、間取り(家族構成の変化)…様々な要素が積み重なった結果だと思います。建て替えはモッタイナイからリノベーションを…とはいかないのが現実です。内壁、外壁、断熱材などの施工が正しく行われ、定期的なメンテナンスがあってこそ木材は本来の耐久性を維持できます。壁体内結露や雨漏りなどの急激な変化を避けていなければ傷みます。丈夫な軸組み、断熱性、防水、通気、長持ちする屋根材や外壁材、家族の変化に対応する間取り…。新築時の思いにとらわれすぎず、50年、60年の暮らし、子、孫が受け継いでいける、永く価値を持ち続ける家が造りたいですね。ウッドショックで木材の価格は倍以上になりました。しかし、木材の強度のピークである200年の1/5も住むことなく取り壊し、「木材が高い」というのもどうかと思います。30年前とは比べ物にならないほど工法や材料が進化し、200年とはいかずとも100年を生き続ける建物は造れるはずです。もちろん数回のリノベーションは必要ですが、新築3回よりはずっと良いのではないでしょうか。
法隆寺の木が永く生きているのも、木にとって良い環境だからだと思います。私たちが暑い、寒いと断熱材でくるみ、冷房、暖房、湿気など、こちらの都合を押し付ける住まいは、木にとってかなり過酷な状況なのだと思います。法隆寺には当然間取りの変更などありませんし…。とはいえ私たちの生活に必要なものは捨てられません。バランスの良い軸組、正しい材料選びと施工、定期的なメンテナンス、知恵を絞って長持ちする家を造り、守り続けていきたいと思います。

イトウ技建株式会社